← 腎疾患トップへ戻る
FAMILY HISTORY / ADPKD

家族に腎臓病・透析をしている方がいる方へ

家族歴は、症状が出る前に腎臓病を見つける手がかりです。多発性嚢胞腎では腎臓だけでなく、脳・心臓・血管など全身の合併症を含めた継続管理が重要です。

家族
気になることからこのページへ来た方へWHY THIS PAGE

ご家族に腎臓病・透析歴がある方へ

ご家族に腎臓病や透析をしている方がいても、必ずご自身に同じ病気が起こるわけではありません。一方、腎臓病には遺伝が関係するものがあり、家族の病名や透析を始めた年齢は重要な手がかりになります。 遺伝性腎疾患が隠れていないか確認し、代表的な多発性嚢胞腎についても知っていただくため、このページをご案内しています。

01
FAMILY HISTORY

家族歴は、腎臓病を見つける手がかりです

家族に透析をしている方がいても、必ず遺伝性とは限りません。糖尿病、高血圧、糸球体腎炎など、透析に至る原因はさまざまです。一方で、腎臓病には遺伝が関係するものもあります。同じ家系に腎臓病や透析をしている方が複数いる場合、比較的若い年齢で透析を始めた方がいる場合には、家族の病名や発症年齢を確認することが大切です。

02
ADPKD

遺伝性腎疾患の中で最も多いのが、多発性嚢胞腎です

遺伝性腎疾患にはさまざまな病気があります。その中で最も頻度が高いのが、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)です。両側の腎臓に多数の嚢胞が生じ、年齢とともに大きくなったり数が増えたりすることで、徐々に腎機能が低下することがあります。家族歴、尿・血液検査、画像検査を組み合わせて評価し、すべての方に遺伝学的検査が必要なわけではありません。

03
KIDNEY

腎臓では何が起こるのか

嚢胞が増大し、正常な腎組織を圧迫する
高血圧を合併しやすい
血尿、疼痛、嚢胞出血、嚢胞感染、結石が起こることがある
腎機能が徐々に低下する場合がある
04
TOTAL CARE / COMPLICATIONS

多発性嚢胞腎は、腎臓だけの病気ではありません

腎機能の数値だけを追うのではなく、脳動脈瘤、心臓弁膜症、大動脈疾患、肝嚢胞など、腎臓以外に起こり得る病変も含めて継続的に確認することが重要です。

MAJOR COMPLICATIONS

代表的な合併症

脳動脈瘤

脳動脈瘤は破裂するまで症状がないことがあります。家族の脳動脈瘤・くも膜下出血歴、原因不明の突然死、高血圧、喫煙歴などを確認し、頭部MRAの実施が望ましいと判断すれば検査を予定します。

突然発症した激しい頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんがある場合は、直ちに救急要請してください。

心臓弁膜症・大動脈疾患

僧帽弁逸脱症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症などに注意します。胸部大動脈瘤や大動脈解離との関連も報告されていますが、全員に一律の画像検査を行うのではなく、症状や診察所見、大動脈疾患の家族歴などに応じて検査を検討します。

肝嚢胞

肝臓にも嚢胞ができることがあり、肝臓や腎臓の腫大に伴って腹部膨満などが生じる場合があります。

その他

高血圧、嚢胞出血、嚢胞感染、腎結石、慢性的な背部痛などにも注意し、症状や経過に応じて評価します。

05
ASSESSMENT

尿検査・eGFR・画像検査を一緒に確認します

検査結果を総合して評価します

尿蛋白・尿潜血、クレアチニン・eGFR、血圧、腎臓の大きさや嚢胞の分布、過去からの腎機能推移を確認します。必要に応じて頭部MRA、CT・MRI、心臓超音波検査を基幹病院で実施できるよう調整します。

eGFRについて詳しく見る →

06
TREATMENT

多発性嚢胞腎には、進行を抑える治療があります

トルバプタン(商品名:サムスカ)

多発性嚢胞腎を完治させたり、できた嚢胞を消したりする薬ではありませんが、適応のある方では、腎臓の容積が増える速度と腎機能の低下を抑えることが期待できます。

すべての方が治療対象になるわけではありません。腎臓の大きさや増大速度、腎機能の推移、年齢、合併症などを総合して、治療による利益が負担やリスクを上回るかを判断します。

07
DESIGNATED INTRACTABLE DISEASE

多発性嚢胞腎は国の指定難病です

医療費助成の主な認定要件

まず、国の診断基準に基づいて多発性嚢胞腎と診断されていることが前提です。そのうえで、次のいずれかを満たす場合に、重症度基準の対象となります。

CKD重症度分類が「赤」に該当する場合
具体的には、eGFR 45~59で尿蛋白/Cr比0.50g/gCr以上、eGFR 30~44で尿蛋白/Cr比0.15g/gCr以上、またはeGFR 30未満の場合です。
腎容積750mL以上かつ、腎容積の年間増大速度が5%以上の場合

いずれの基準に該当するかは、検査結果や画像を用いて難病指定医が評価します。最終的な認定は、申請先の自治体による審査で決定されます。

08
MESSAGE

腎臓診療の現場に携わる立場から

医師がやさしく説明しているイラスト

家族に腎臓病や透析をしている方がいても、必ず同じ病気になるわけではありません。しかし、同じ家系に腎臓病や透析をしている方が複数いる場合や、比較的若い年齢で透析を開始した方がいる場合には、遺伝性腎疾患が隠れている可能性を考える必要があります。その代表が、常染色体優性多発性嚢胞腎です。

多発性嚢胞腎の診療では、腎臓の大きさや腎機能だけを追えばよいわけではありません。脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血によって致命的となる可能性があります。命が助かっても、麻痺、言語障害、認知機能障害などによって、その後の生活が大きく変わることがあります。また、心臓弁膜症、高血圧、肝嚢胞、嚢胞感染、嚢胞出血など、腎臓以外の合併症にも注意が必要です。

実際に、比較的若い年齢でくも膜下出血を発症して脳神経外科へ入院し、入院中にたまたま行われた腹部画像検査をきっかけに多発性嚢胞腎が疑われ、腎臓内科へ紹介となる患者さんに出会うことがあります。もし多発性嚢胞腎をより早く診断し、その精査で脳動脈瘤を破裂前に発見できていたら、と考えさせられることが何度もありました。だからこそ、プライマリケアの段階で家族歴や画像所見から病気を早期に見つけ、必要な専門的管理につなげることが重要です。

そのため、多発性嚢胞腎は単なる「腎臓に嚢胞ができる病気」ではなく、全身を継続的に評価する必要がある病気です。

当院では、腎機能、血圧、尿検査、症状、家族歴だけでなく、脳動脈瘤や心血管合併症のリスクも確認します。頭部MRA、心臓超音波、CT・MRIなどが必要な場合には、基幹病院や各専門診療科へつなぎます。腎臓内科を診療の窓口として、必要な専門医療と連携しながら、患者さんの全身と将来の生活を長期的に支えていくことが重要だと考えています。